薬の経路
私たちが不調の時に服用するお薬。
これが、どういう経路で全身を巡るのか。
口から飲み込んで消化管に入った後、
どうやって目的の場所にたどり着くのだろう?
ある日、静脈について調べようと本をめくっていたら、
このことについてわかりやすく説明してあるページにめぐり合いました。
私もそこを読んで初めて理解できた気がしたので、
今日はご紹介したいと思います。
ただし、「わかりやすい」とは言っても専門用語だらけなので、
そういう単語に慣れていない方は読む気にもならないかもしれません。
興味がある方だけ読んでみてください。
『イラスト解剖学』より
(下記は第6版から引用しました)
ふつう、投与された薬は血流によって全身に送られる。
この際、静脈系の果たす役割は大きく、
その全体像を把握しておくことはきわめて重要である。
また、静脈系の全体像を把握しておくと、
いくつかの病態を理解するうえでも役立つ。
【経口投与】
口から飲んだ薬は消化管から吸収されて静脈に入る。
消化管の静脈は門脈を経て肝臓に向かうので、
吸収された薬も肝臓に送られる。
肝臓は代謝に働くため、多くの薬成分は分解されてしまうが、
分解されにくい薬成分は肝静脈から下大静脈を経て心臓に至り、
肺を通り越して再び心臓に戻った後、動脈系で全身に運ばれる。
このため「肝臓で分解されやすい薬」は
経口投与では効果が期待できない。
【静脈(内)注射と舌下錠】
一般に、静脈注射は上肢の皮静脈で行われ、
薬は腋窩静脈、鎖骨下静脈を経て上大静脈から心臓に入り、
肺を通って心臓に戻された後、全身に送られる。
このように、吸収された薬が肝臓を通る前に
全身に送られるのは舌下錠でも同様である
〔舌静脈→内頚静脈→上大静脈→右心→肺→左心→全身〕。
なお、アリナミンなどの静脈注射を受けている最中に
「薬の匂い」を感じることがあるが、
これは肺で呼気中に出てきた薬成分を鼻腔が感じるためである。
【坐剤(坐薬)】
肛門に挿入された坐剤は直腸下部の粘膜から吸収される。
直腸下部からの静脈血は下直腸静脈などから
内腸骨静脈を経て下大静脈に送られる。
このため、吸収された坐薬の成分は肝臓を通らずに心臓に送られ、
肺から心臓に戻った後、動脈系によって全身に運ばれる。
つまり「肝臓で分解されやすい薬」も
坐剤ならば効果が期待できるといえる。
薬が全身を巡る経路についてはここまでなのですが、
静脈について面白い内容があったので、以下に引用します。
もう少しお付き合いください。
【直腸癌の血行性転移】
直腸の静脈分布を大まかに言うと、
上部には上直腸静脈(→下腸間膜静脈→門脈)、
下部には中・下直腸静脈(→内腸骨静脈→下大静脈)が分布する。
このことは、直腸上部の癌の血行性転移は肝臓に多く
(門脈を通るから)、直腸下部の癌の血行性転移は肺に多い
(心臓を通り越して肺に入るから)ことの理由として理解できる。
なお、骨盤部の癌には、腰静脈から
椎骨静脈叢を経て脳に転移するケースもある。
【エコノミークラス症候群】
飛行機などで座ったまま脚を動かさずにいると、
静脈内に凝血が起こりやすい。
これが何かの拍子に血流で運ばれ、
肺などの血管を詰まらせることがある(塞栓症)。
ロングフライト症候群とも呼ばれ、
手術などによる長時間臥床後に起こることもある。
下肢の静脈は下大静脈に連絡しているため、
凝血塊は肝臓に入らず、肺や脳に入って詰まる例が多い。
また、腹部損傷の患者では
下肢の静脈から輸血などを行うのも危険とされる。
下肢の静脈と直接連絡する下大静脈から
腹腔内に漏れ出すことがあるためである。
以上です。
静脈の経路をざっくり理解しておくのにも役立つ内容でした。
解剖学は難しい学問ですが、
仕組みがわかってくるとおもしろくなってきます。
そして、こういう小さな理解の積み重ねが、
日々の施術で大きな気づきにつながる。
これは、ここ数年で実感したことです。
この仕事で生きていけるのは、
本当にありがたいことだと思います。
- 2017.03.31 Friday
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- by 白樺整体院